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東京家庭裁判所 昭和38年(家イ)3871号 審判 1963年10月22日

審   判

国籍

韓国

住所

東京都

申立人

○○○

国籍

韓国

住所

申立人○○○に同じ

申立人

×××

住所

東京都

相手方

△△△

昭和三〇年一月四日生

住所

相手方に同じ

上記特別代理人

□□□□

上記当事者間の昭和三八年(家イ)第三八七一号および第三八七二号親子関係不存在確認申立事件について、当裁判所はその申立を正当と認め次のとおり審判する。

主文

申立人らと相手方との間にいずれも親子関係が存在しないことを確認する

理由

申立人らは主文同旨の審判を求めた。

よつて考えるに、申立人○○○、同×××、相手方特別代理人□□□□および証人◇◇◇に対する各尋問の結果、練馬区長作成の登録済証明書、申立人○○○および同×××の各外国人登録証明書および本件記録添付の各証拠資料を総合すれば次の事実が認められる。

申立人○○○は、慶尚北道大邱府南旭町に本籍を有し、昭和一〇年三月三日以来日本に居住している朝鮮人であり、申立人×××は、平安南道龍岡郡瑞和面同相里に本籍を有するが、日本において出生し、日本に居住している朝鮮人である。

ところで、申立人○○○の外国人登録票(登録番号⑦第一一五、八二八号)には、申立人×××は同○○○の妻として(たゞし、婚姻届はしていない)、また相手方は申立人○○○と同×××間の長女として記載されているが、真実は相手方は申立人らの子ではない。

すなわち、相手方は、昭和三〇年一月四日申立外◇◇◇と相手方特別代理人□□□□との間に婚姻外の子として出生したものであるが、友人として◇◇◇と交際していた申立人らにおいて相手方を引取り養育することになり、養子縁組の手続をするよりいきなり申立人らの子として届出た方が親子の情愛も深まるものと思い、申立人○○○においてその旨届出たゝめ、外国人登録原票に上記のような記載がなされたものである。

しかも、上記の事実は当事者間に争のない事実である。

ところで、血縁的親子関係が存在しないにもかゝわらず、外国人登録原票などの公簿に親子として記載されている場合に、親子関係の外観を否定することが出来るかどうかおよびその方法如何という問題の準拠法については、法例には直接の規定はないか、子が嫡出子なりや否やの問題は法例一七条によるべきであるが渉外婚外親子関係の発生に関しては、認知に関する法例一八条一項の規定を準用して解決すべきものである。

そこで、本件において親とされている申立人らの相手方出生当時における本国法について考えるに、朝鮮においては現在朝鮮人民民主主義共和国政府と大韓民国政府とが対立し、互に自己を朝鮮全域全人民を支配する政府であると主張しているが、現実には北緯三八度線をほぼ境としてそれぞれの支配領域を有し、その領域に独自の法秩序を有し、各領域においてのみその実効性が担保されていることは顕著な事実である。そしてこのような場合は、国際私法上朝鮮人民民主主義共和国と大韓民国とを端的に二つの国とみなし、いずれの国が当事者の身分関係とより密接であるかによりその本国法を決すべきところ、前記のとおり、申立人らはいずれも大韓民国政府の支配していることが明らかである領域に本籍を有しているのみならず申立人らは諸般の情況からより韓国と密接な関係があると認められるので、同政府のもとにおける法律をもつて申立人らの本国法と解するのが相当である。さらに相手方は上記認定のとおりとすれば日本国籍を有するものとするも、韓国家事審判法二条乙類四号によれば、親生関係存否の確認は家庭法院(わが国の家庭裁判所に相当する)の審判事項とされている。

すなわち、大韓民国においても、現に日本民法と同様に血縁的親子関係が存在しない場合には家庭法院の審判により、法律上、親子関係が存在しないことの確認をなすことが許されるものというべきである。しからば申立人らと相手方との間に親子関係が共に存在しないことを確定するには韓国民法(附則を含む)のみを基準とするも、また父母の本国法としては韓国民法に、子たる相手方については日本民法に、夫々準拠するとするも、その結果には差異はないものと云うべきである。

そこで、本件申立を正当と認め、家事審判法二三条により主文のとおり審判する。

昭和三八年一〇月二二日

東京家庭裁判所

家事審判官 加 藤 令 造

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